第20回日本音楽療法学会学術大会 講習会要旨

音楽療法における<喜び>の意義

音楽療法において,音楽による美的体験や感動,喜びが治療上大きな役割を果たすことはめずらしくない。それらの体験の重要性についても故C・ロビンズ氏や故C・ケニー氏,B・スティーゲ氏,また今回本学会に参加されるK・エイゲン氏など,多くの音楽療法士・研究者が指摘している。音楽による美的体験や喜びは,ふつうに考えられているような楽しさや調和的快体験といったものにとどまらない内実をもつ。ここに注目することで私たちは,セッションにおける音楽についてこれまで以上に自覚的になることができる。そればかりか,社会のなかで音楽療法士が果たしうる役割についても考察を深めることができるだろう。当日は,上記以外の研究者たちの言説を含めこれまでこのテーマについていかなる議論があったのか検討する。その上で,私自身の体験や研究を振り返りながら,特に音楽療法における<喜び>という契機に焦点を当てて,その広く深い意義について考察してみたい。

プロフィール

1983年金沢大学医学部卒業。1989-1990年ウィーン大学精神医学教室に留学。同時にウィーン国立音楽大学音楽療法科聴講生として学ぶ。国立精神・神経センター武蔵病院医長を経て,現在,国立音楽大学教授。医学博士。精神保健指定医。日本精神神経学会・精神科専門医。

著書・翻訳書:『精神の病いと音楽—スキゾフレニア・生命・自然』(廣済堂出版),『音楽療法事典[新訂版]』(共訳,人間と歴史社),『文化中心音楽療法』(監訳,音楽之友社,2008),『音楽療法と精神医学』(人間と歴史社),『ケースに学ぶ音楽療法Ⅰ・Ⅱ』(共編著,岩崎学術出版社)など。