音楽療法のセッションは「声」であふれています。そこには話し声、笑い声、泣き声、歌声、叫び声、うめき声、声にならない声など、多種多様な「声」が存在しています。「声」は私たちがそれを意識したとたん、その声はただの音ではなく、意志や意味をもつものとして様々なことを語りかけてきます。つまりある人の声を聴くことはある人に「コンテクスト」を与えることでもあるのです。「クライアントの声を聴く」と言いますが、私たちはクライアントの声の中に何を聴いているのでしょうか。そしてクライアントは私たちセラピストの声の中に何を聴いているのでしょうか。
他者の声の中に自分の声を聴く、つまり他者を通して自分を知る―このことが人と人との関係に変化をもたらし、文化を生み、次の人へと広がり、コミュニティが形成されていきます。この講座では「声」「聴く」をキーワードに、コミュニティミュージックセラピーの描く世界観を考えていきます。