第20回日本音楽療法学会学術大会 講習会要旨

実践者が音楽療法を研究するということ・2 その舞台裏

私たちは実践する中で、「何か」にひっかかり、覚えておきたい、もっと深い意味を知りたいと思うことがある。おそらくそれは、音楽療法士としての成長の「節」にさしかかった時なのかもしれない。言葉にならないこの「ひっかかり」をあえて「言語化しようとする」ことは、成長の大きな一歩になると考える。実践を言語化することは、ごく小さい報告書から論文執筆まで含め、音楽療法士の基本的業務の一部でもある。
 そうした意味で、音楽療法士が日々の臨床を深め、説明責任を果たし、自らの専門性を高め、領域の可能性を拡げて行くために行う次の三つのサイクルは、切り離せない「研究」と捉えられる。

  1. 1)実践=臨床する
  2. 2)検証=起きたことをより深く知る
  3. 3)対話=他者と共有してさらに模索する

本講義では、F-1 実践者が音楽療法を研究するということ・1 その多様な可能性―を受け、講師が2019年度の本学会で口頭発表した「終末期の高齢者と家族、セラピスト間の、音楽を媒体とした交わりーエスノグラフィーを参考にした質的事例研究試論」の舞台裏を紹介する。ただし、成功した研究の教科書としてではなく、迷ったポイント、困ったポイント、見えてきた何か、さらに見えなくなった何かなどを生きたサンプルとして共有する、上述3)「対話」の試みである。

プロフィール

米国音楽療法協会認定資格取得後、コロンビア大学教育学部にて修士課程修了。日本での臨床・教育活動を経て、2015年お茶の水女子大学より博士号。現在、同大学基幹研究員、東海大学・放送大学非常勤講師、野花ひととおんがく研究舎*主宰。Voices, A world Forum for Music Therapy 編集委員。著書に「音楽療法士のしごと」、共著に「静かな森の大きな木」「The Lives of Music Therapists: Profiles in Creativity – vol.2」他。訳書に「音楽療法を定義する」(ブルシア)、「音楽する人間」(ロビンズ)他。

* https://nlnmhd.wixsite.com/website